年末じゃんぼ

今年も年賀状の募集開始しました。11月20日までの募集で、今回はハガキのみとなります。
20日までは募集記事が一番上に出てるので、興味のある方は是非ご覧ください~。


天道  ルミクッカ  ハデス
天道(エルレイド)、ルミクッカ(氷雪ビビヨン♂)、ハデス(ズルズキン♂)
最近増えた子~。
天道は設定も上げております。光道(サーナイト♂)の双子の兄弟。戦いと女と光道いじりが大好きな破戒僧。
この子も傭兵団の子です。乱芭隊は男しかいなくてむさくるしいので、そろそろ女の子入れたい……
ルミクッカは頂いた子。卵の状態で交換したんですけど、ビビヨンの模様って卵の時点で決まるんですね。日本ロムで孵化してもちゃんと羽白かった!
旅が好きでちょっとぽや~っとした子になる予定。そのうちもっとちゃんと描く……
ハデスは劇団オリンポスの団員。悪役が得意だけど、本人は至って普通のいい兄ちゃん。この子もそのうちちゃんと描きたい……


追記に文章。
くろがみさん宅のお子さん方をお借りしています。花街妄想が、凄い(凄い)
大まかに貴船さん&天海さんと吉野の馴れ初め的な話なんですけど、色々詰め込み過ぎて逆に各シーンが書き足りない感あるので……機会あればもっと細かく書きたいです。はい。
保存転載等はくろがみさんのみご自由にどうぞ。誤字脱字は見付けたら後でこっそり直します。
書かせて頂き有難う御座いましたー!



「いらっしゃいませ。どうぞ、ごゆるりと」
仮面で顔の半分を隠した狐に見送られ、貴船は見上げる程大きな門をくぐった。
まだ昼間とはいえ、花街の大通りには多くの人々が行き交っている。街の住人、外部からの客、遊女、そして――侍。
優美な外見とは裏腹に、貴船の腰には大きな刀が下げられている。しかし、不思議と釣り合いの取れている様は、流石は剣の大鬼とでも言うべきだろうか。貴船は堂々とした足取りで通りを進み、軒を連ねる商店を覗き込む。
「何処か、時間を潰せる店はありませんかね……。急に文を寄越すだなんて、丹波様もお人が悪い」
小さく溜息を吐き、貴船は懐から一枚の紙を取り出す。
使いの鳥が運んできたそれは、丹波からの呼び出しの文だ。文と言えど、最低限の用件しか書かれていないもはや電報のようなものだが。
「手合せをするから、お前も来い。……とは、丹波様らしいといえばらしいですけれど」
文によれば、今日の未の刻に、忍衆と門番衆とで手合せを行うらしい。そこに貴船も参加せよとのことだ。
時折戦闘に協力することはあれど、貴船は丹波の部下ではない。わざわざ指示に従う必要も無いのだが……今回ばかりは話が別だ。花街の門番衆といえば、忍衆に引けを取らない実力者の集まりと聞く。そんな者達との手合せの機会を逃すのは、流石に勿体無いだろう。
そういうわけで遥々花街へとやってきた貴船だが、まだ約束の時間までは暇がある。適当な商店を覗き見ていれば、いい時間になるだろうか?
そう思って通りを歩いていると、ふと小さな茶屋が目に入った。
何の変哲もない茶屋だが、軒先に置かれた長椅子に一人の女性が腰掛けていた。穏やかで品のある佇まいだが、その瞳にはどこか幼い少女のような光が宿っている。
「…………」
貴船はしばらく無言で女性を眺めていたが、そっと左手で刀を押さえると、静かに女性へと近寄った。貴船が目の前で立ち止まると、女性はゆっくりと顔を上げる。
「失礼。……隣にお邪魔しても、よろしいですか?」
「ええ。勿論ですわ、お侍様」
声を掛けると、女性はにこりと微笑んで椅子の端に身を寄せた。貴船は空けられた場所に腰を下ろし、店内へと声を掛ける。
「すみません。茶を一杯、頂けますか?」
「はい。少々お待ちください」
貴船が女性へと視線を戻すと、彼女は笑みを浮かべたまま貴船を見詰めていた。小さな唇を開き、貴船に問う。
「お侍様は、この街へは何をしに?」
「少々、人に呼ばれまして。今日は忍衆と門番衆の手合せがあるでしょう?それに参加するんです」
「あらあら、まぁ。それはそれは……!」
特に隠すことも無いだろう。貴船が素直に答えると、女性は少しだけ驚いた様子で口を覆った。
「忍衆の皆様も、門番衆の皆様も、どちらもお強いのですよ?それに混ざるだなんて、お侍様も相当の腕前なのですね」
「そうですね……まぁ」
言いながら、貴船は刀に手を掛けた。すらりと引き抜かれた刀身は日の光を反射して輝き、恐ろしい武器であるにも関わらず芸術品のような魅力を放っている。
「この程度のことなら、朝飯前ですよ」
言い終わるが早いか、貴船は刀を振り下ろした。その切っ先は、何時の間に近寄っていたのだろうか?女性の背後に立つ浪人風の男に向けられている。
男は呻き声のひとつも上げることなく、その場にどさりと崩れた。男の手からは、女性に向けられていたであろう小刀が軽い音を立てて落ちる。
「力なき無抵抗の女子供に手をあげるその所業、この鬼が赦しはしない。地獄で猛省せよ」
先程から女性に向けられていた、おぞましい憎悪と殺気。もしやと思い同席したが、予想通りになってしまった。
貴船が刀に付いた血を払い鞘に納めると、その脇をすり抜けて女性が倒れる男へと歩み寄った。女性は地面に膝をつき、男に向かってそっと手を合わせる。
「お知り合い、でしたか?」
貴船が訊ねると、女性は「お気になさらず」と首を振った。
「よくある事ですから。仕事柄、狙われやすいもので……。それよりお侍様、お助けくださり有難う御座いました」
にこりと笑顔を浮かべる女性に、貴船は少々面食らう。目の前で人が斬り殺されたというのに、この女性は随分と落ち着いたものだ。
「あなた……狙われやすいと仰いましたが、お仕事は何を?」
少々不躾ではあるが、興味が湧いた。貴船が訊ねると、女性は気を悪くした様子も無く答える。
「私、遊女をやっております。吉野太夫……と言えば、ご存じありませんか?そこそこ名の知れた方だとは思っているのですが」
「吉野太夫……?」
女性――吉野の言葉を受け、貴船は合点がいったと頷いた。
廓遊びとは縁遠い貴船ですら、その名前くらいは聞いたことがある。花街三大遊女の一人、吉野太夫。その美しさや聡明さ、語られる点は数多いが、彼女の何よりの特徴は――
貴船が倒れる男の死体に視線をやると、その体には貴船が付けたものとは別の刀傷が走っている。そう、これこそが吉野太夫最大の特徴。
「……なかなかの腕前だな、女」
地を這う様な低い声に、貴船が身構える。
吉野太夫の傍らには、何時の間に現れたのだろうか?数多の刀にその身を貫かれた異様な姿の男が立っていた。
「妖刀村正、ですか」
その立場から、無理心中を図る男達に命を狙われやすいという吉野太夫。そんな彼女が護身刀として連れ歩いているのが、村正だ。
村正は貴船を睨むと、その体から刀を一振り引き抜いた。彼は存在そのものが刀なのだろう、引き抜いた箇所から赤い血が流れることはない。
「……」
貴船もまた、刀を構える。負ける気はしないが、村正の全身から放たれる殺気は尋常ではない。油断してかかれば、深手を負うだろう。
じりじりと距離を詰め、いざ斬りかからんとした瞬間。
「おやめなさい、村正」
吉野の凛とした声が響き、村正が動きを止めた。静かに刀を下ろすと、貴船を一瞥して吉野へと向き直る。
「何故止める?」
「当然でしょう。この方は私を助けてくださったのですよ?感謝こそすれ、襲い掛かる道理などありません」
ぺしりと村正の手を叩き、吉野は貴船に深々と頭を下げる。
「申し訳御座いません、お侍様。私の刀がとんだご無礼を……!どうお詫びすれば」
「いいえ、お気になさらないで。頭を上げてくださいな、吉野太夫」
貴船は吉野の肩に手を置き、優しく言う。何、少々驚きはしたが怒ってはいないのだ。むしろ、村正の放つ殺気に高揚感すら覚えた程だ。
「妖刀村正、手合せならまた後日行いましょう。私は、今日は先約があるんです」
何やかやとしていたら、そろそろ丹波との約束の時間が迫っていた。村正の相手をしている暇は無い。
「吉野太夫、気を付けてお帰りくださいね。道中また襲われないとも限りませんから」
長椅子に銭を置き、貴船は吉野に背を向ける。
「あ、あの……お侍様。せめてお名前を」
「ダイケンキ一族が末裔、貴船と申します。またお会いしましょう、吉野太夫」
にこりと柔らかな笑みを浮かべ、貴船は人混みの中へと姿を消していった。
その背中を見送る吉野に、頭上から声が降りかかる。
「吉野、そんな熱心に何を見てるんだ?」
「あら……お兄様」
茶屋の屋根から飛び降りてきたのは、門番衆がひとり、灼錠。吉野の実兄だ。
灼錠は道に転がる男の死体と村正を交互に見やり、不思議そうに首を捻る。
「吉野、今見てたのは誰だ?侍か?この死体、村正以外の傷があるぞ」
「ええ。貴船様、と仰る方ですわ。……お兄様、今日の忍衆の皆様との手合せ、ご参加なさるのでしょう?」
「ん、ああ。俺と門番長だろ?あと不出と籠女、瓦車もか。流石に警備がら空きはマズいからな、全員は無理だ」
「そうですか。でしたら、そこでお会いできると思いますわ。貴船様にどうぞ宜しくお伝えください」
「へぇ、忍衆の奴なのか?そりゃ楽しみだ」
にぃっと口の端を吊り上げると、灼錠は男の死体を担ぎ上げた。
「その方、私の方でお弔いしましょうか?」
吉野が呼び止めると、灼錠はひらひらと手を振って答える。
「いいって。水貴んトコ寄って、そのまま道場行ってくる」
「そうですか。行ってらっしゃいませ、お兄様」
「おう」
灼錠は死体を軽々と担いだまま、茶屋を後にする。
誰もいなくなった店先で、吉野は長椅子に座り直して湯呑を持ち上げた。冷めきった茶を一口すすり、何時もと変わらぬ微笑みを浮かべて言う。
「お兄様と貴船様……どちらが村正を折るのでしょうね?それとも、他の誰かでしょうか?」
その問いに答えることなく、村正は吉野の傍らに跪いた。


**********


花街の道場は、利用者が利用者だからだろうか。一般的なそれよりも格段に大きく丈夫な造りとなっている。その道場の中央に、忍衆と門番衆が向かい合って並んでいた。
丹波率いる忍衆は、鬼灯、天海、玉兎、それに貴船を合わせた五名。
門守率いる門番衆は、瓦車、不出、籠女、灼錠の五名だ。
「精々お手柔らかにな、門番長殿?」
「それはこちらの台詞ですよ、丹波様」
挑発的な丹波の言葉に苦笑を浮かべつつ、門守はルールの確認をする。
「一対一で五試合。降参あり。殺すのはなしでよろしいですな?」
「ああ、構わん」
「それでは、こちらの一人目は……不出。行ってこい」
「はい」
頷き、門守は不出の背を押す。
「なら、こちらは玉兎だな。行け」
「承知しました」
丹波もまた、玉兎を指名した。
他の者達は皆壁際に下がり、玉兎と不出が中央で対峙する。
「この間は頭領がいらっしゃって有耶無耶になっちゃいましたけど……今日は負けませんから!」
「それは俺の台詞だ、今度こそ勝たせてもらうぞ?……そうだな、折角試合形式で戦るんだ。何か賭けるか?」
「えっ……えーと。それじゃあ、甘味処で食べ放題なんてどうでしょう?負けた方の奢りで」
「分かった。財布の中身、ちゃんと確認しておけ、よっ!」
「不出さんこそっ!」
試合開始を告げる鐘の様に、金属のぶつかり合う音が道場に響く。
クナイを構える玉兎と、小刀を構える不出。ひとまずは相手の出方を窺うつもりのようだ。一太刀浴びせては距離を取り、また飛び掛かる。互いの戦法を熟知しているからこそ、迂闊な動きはできない。
一進一退の攻防を繰り広げる二人に、それぞれの陣営からも声が漏れ始める。
「全く、不出の奴は甘すぎる」
「そうか?こんな試合で賭け事なんざ、随分と図太くなったじゃねぇか。籠女は厳しいよなぁ」
門番衆の陣営には、後輩の試合に不満顔の籠女と、そんな彼女を笑い飛ばす灼錠の姿があった。
能天気な灼錠の言葉に、籠女はぎろりと彼を睨み付ける。
「おっと、怖い怖い」
「私達が負けたら、誰が花街を守るんだ?お前ももっと自覚を持て!」
「自覚ねぇ」
籠女に言われ、灼錠はちらりと向かいの壁を背にして並ぶ忍衆を見やる。
灼錠にとっての花街は、嫌いではないが何よりも大切という程ではない。ただ、妹がいる限り何かあっては困るだけだ。
その妹を助けてくれたのは……忍衆陣営の一番端にいるダイケンキの女侍だろう。名は貴船といったか、普段街中で見かけない顔だ。
「そうだな、どうせなら強い相手と戦いたいよな」
忍衆の頭領、丹波は言わずと知れた実力者だ。おそらく、門守が手合せの相手をするだろう。それに次ぐ実力だという鬼灯の相手は、こちらもまた実力者である瓦車になるに違いない。
ともすれば、自然と灼錠の相手は二人に絞られる。どうせならば貴船と手合せしてみたいものだ。
「あー、でも迷うよなぁ。な、籠女ねーちゃんはどっちがいい?」
「誰であろうと手を抜くなよ。……それより、見てみろ」
すっかり考え事に没頭している灼錠を小さく叱り、籠女は中央で戦う二人を指し示す。
少し注意を逸らしていた間に、戦況は大きく動いていたようだ。玉兎も不出も武器を投げ捨て、素手での殴り合いになっている。こうなると、格闘術を極めた玉兎の方が有利だろう。幻影を纏い辛うじて攻撃をかわしているが、不出は少々押され気味だ。
「破っ!」
「ぐっ!」
玉兎の鋭い蹴りが不出の膝を砕き、大きく体制を崩す。
すかさず玉兎は、大きく足を振り上げた。不出の脳天を狙い、勢いよく踵を落とす。
「これで終わりです!」
「っ!まだだっ!」
片膝を砕かれ動きを封じられたものの、戦意は失っていない。不出もまた、下から突き上げる様に不安定な姿勢の玉兎へと技を繰り出した。
「っ!」
不出の攻撃は玉兎の腹部に見事に命中し、突き上げられた衝撃で玉兎の体が宙に浮かんだ。あばらの数本は折れたかもしれない、口の端にも血が滲んでいる。しかし、怪我を負ってもなお玉兎は止まらない。
玉兎は空中で両足を揃えると、不出に狙いを定めた。このまま落下すれば、全体重を乗せた蹴りを不出に浴びせることができる。不出も反撃の隙を探し、意識を玉兎に集中させた。
「……灼錠!」
「了解!」
今回のルール上、命に係わる攻撃はご法度だ。このまま攻撃が命中し、戦闘が続行されればお互い致命傷を負いかねない。
門守の鋭い声に応え、灼錠はその場から飛び出した。二人の間に割って入ると、不出の腕を道場の床に縫い付ける様に踏み抜く。
一方の玉兎も、忍衆から静止が入ったのだろう。落下してくる玉兎を、貴船が刀の鞘で受け止めていた。
「玉兎さん。それ以上は規定違反になりますよ」
「あ……!」
貴船は静かな口調で言うと、鞘で弾くように玉兎を道場の床へ転がした。玉兎は戦意を喪失した瞬間、先程の不出の攻撃による痛みに腹部を襲われ、小さく顔を歪める。
「痛っ……!」
「当然でしょう。さ、立てますか?」
「はい……。あ、不出さんは」
玉兎が不出に視線をやると、不出は灼錠に腕を掴まれ、力任せに引き上げられていた。怪我人にも容赦なく、灼錠はあっけらかんとした声で言う。
「不出、片足でも立てるだろ?試合は終わったんだ、早く端に退いてくれ」
「相変わらず手厳しいですね、灼錠さん……」
「別に、普通だろ?」
にかりと笑うと、灼錠は腕を振り回し不出を壁際へと放った。待ち構えていた瓦車が受け止めると、不出は小さく呻き声を上げる。
「不出さん、大丈夫ですか?」
腹部を抑え、玉兎はよろよろと不出に歩み寄る。
「ああ……。この場合、勝敗はどうなるんだろうな」
「引き分け……なんですかね?また決着が付きませんでした」
残念そうに玉兎が笑う。
玉兎と不出が肩を落としていると、くしゃりと頭を撫でられた。揃って顔を上げれば、門守が満足そうに頷いている。
「引き分けとはいえ、二人ともよくやった。見舞いには甘いもんでも持ってってやるよ」
「門番長」
「その怪我じゃ、しばらく入院だろ。玉兎も」
「は、はい」
ぐりぐりと撫で回される若者達を眺め、丹波からも笑いが漏れる。
「やれやれ、門番長殿は甘いな」
「いやはや、年のせいですかね?……さて、次の試合にいきましょう」
門守が軽く手を叩くと、道場の中央にいた灼錠が構えをとった。視線は、正面に立つ貴船へと注がれている。
「お前、『貴船様』だよな?妹が世話になった」
「妹……?」
一瞬首を傾げたが、すぐに思い当たったらしい。貴船は目を細めて笑う。
「ああ……もしかして、吉野太夫の兄君ですか?先程は妹君にお世話になりました」
「そりゃ、こっちの台詞だ。吉野が宜しく伝えてくれとさ」
「そうですか。それはそれは……またご挨拶に伺わせて頂きます。妖刀村正にも興味がありますし」
「へぇ。お前にあれが折れるかね?」
じり、と灼錠が距離を測る。貴船の実力が分からない以上、慎重にならざるを得ない。
そんな灼錠を一瞥し、貴船は優雅に微笑んでみせた。
「生憎ですが……貴方のお相手は私ではありませんよ?」
「え?」
目を丸くする灼錠を残し、貴船はすたすたと忍衆の並ぶ壁際へと歩いていった。それと入れ違いに、ひとりの男が中央へと歩み出る。
「残念だったな。お前の相手は俺だ」
しゃんっ、と手にした錫杖を鳴らし、天海がにやりと笑う。
折角だ、妹の恩人の腕前を知りたかったが……これはこれで悪くない。灼錠もまた、口の端を吊り上げて笑った。
「んー……まぁいいさ。お前とも一度戦いたかったし」
「おいおい、男にモテても嬉しかねーよ」
「そりゃすまん。あとでいい女紹介してやるよ」
軽口を叩き合っているが、目は笑っていない。
「忍衆、天海。門番衆、灼錠。……始め!」
試合開始の合図と共に、同時に床を蹴った。


**********


「そうですか……。それで、結果は?」
「うーん……それがなぁ、俺の反則負けというか何というか。うっかり殺しにかかって止められた」
吉野の酌を受け、灼錠がにかりと笑う。
夜も更けて花街が活気に溢れる頃、灼錠は吉野の座敷を訪れた。昼間の手合わせで負った傷も何のその、元気に動き回る姿はもはや化物のようである。
変わらぬ兄の様子にくすくすと控え目に笑い、吉野はちらりと視線を動かす。
「兄がお世話になりました、天海様。貴船様も、またお会いできて嬉しゅう御座います」
「私の方こそ。またお目にかかれて光栄です、吉野太夫」
「灼錠、お前が言ってたいい女ってぇのはこいつか」
「おう。可愛いだろ」
吉野の恩人である貴船と、手合わせの直前に「いい女を紹介する」と約束した天海。灼錠は、吉野の座敷にこの二人を連れてきていた。
「他にも遊女をお呼びしましょうか?」
折角の兄の来訪、しかも客人付きだ。盛大にもてなそうとする吉野を制し、灼錠は言う。
「いや、大丈夫だろ。それより貴船が」
「吉野太夫。無理にとは申しませんが……よろしければ妖刀村正を見せては頂けませんか?」
灼錠に促され、貴船が頭を下げる。侍として、妖刀に少なからず興味があるのだ。是非ともゆっくり見てみたい。
吉野は少しだけ迷った顔をしたが、すぐに部屋の外へと声をかけた。
「村正」
「何だ」
吉野に呼ばれ、部屋の外に待機していた村正が顔を出す。
「貴船様が貴方に興味がおありとのことです。刀身を見せて差し上げて?勿論、貴船様を傷付けたら許しませんよ」
「承知した」
頷き、村正は静かに室内へと足を踏み入れた。宴の邪魔にならぬようにと部屋の隅に胡座をかき、体から刀を引き抜く。
「存分に見るといい、女」
「感謝します。……ふむ」
村正から刀を受け取り、貴船はすっかり夢中だ。
吉野は貴船を見て微笑むと、今度は天海の隣へと移動する。
「天海様も、楽しんでくださいましね。ささ、もう一杯いかがですか?」
「おう、貰うわ」
吉野の酌を受け、天海が酒を煽る。僧とはいえこの男、なかなかの呑みっぷりである。
「よく呑むなぁ。ちったぁ節制しろよ、生臭坊主」
「生臭坊主か、違いねぇ。酒だけじゃねぇぞ?俺は博打も女遊びも大好きだからな」
「ふふ、良い呑みっぷりですこと。……お兄様と戦われたのでしょう?お体の方は大丈夫ですか?」
吉野が訊ねると、天海は「ああ」と頷いて着物の衿に手を掛けた。軽く肌蹴ると、真新しい包帯が覗く。
「この通りだ。お前の兄貴はどうなってんだ?制止が入らなけりゃ、火傷で済まなかったぞ」
「まぁ!やりすぎですわ、お兄様」
吉野が咎める様な声を上げると、灼錠は詫びる様に軽く手を上げた。
「悪い悪い。でもよ、こんくらいしねぇとこっちがやられてたんだ」
「だっはっはっはっは!そりゃ、俺だって手加減する気は無かったからな」
少々拗ねたような口振りの灼錠に、天海は豪快な笑い声を上げる。拳を交えることで感じるものでもあったのだろうか?敵対した割にはお互いに好意的だ。
「吉野、天海は強いぞ?俺もこう見えて結構体中痛い。貴船も強かったな、門番長と戦り合ってほぼ無傷とは信じられん」
「貴船様、門守様と手合せなさったのですか!?」
吉野が驚くと、貴船は刀を持ったまま振り返り、にこりと笑う。
「ええ。流石は噂の門番長殿です。あれほど心躍る戦いは久し振りでした」
「おぉ、怖い怖い」
にやにやと笑いながら、天海が吉野の肩を抱きその背に隠れる。
「天海。吉野太夫を盾にするとは、男の風上にも置けませんよ」
「そうかい、そりゃ悪かった」
「まったく……」
呆れたように溜息を吐き、貴船は静かに立ち上がった。そっと村正に刀を返すと、吉野の正面へと向かう。
「吉野太夫、有難う御座いました。妖刀村正、いい刀ではありますが……同時に、危険でもあります。くれぐれもご注意ください」
吉野の目線に合わせるよう跪くと、貴船は真剣な顔で言った。一方、吉野は変わらず柔らかな笑みを浮かべたままだ。
「ええ。十分気を付けますわ。お気遣い有難う御座います、貴船様」
「何かあれば、私に仰ってください。微力ではありますが、お力添えを致しましょう」
深く頭を下げ、貴船は自身の刀を手にした。すっと立ち上がると、刀を腰に吊るす。
「私はそろそろお暇させて頂きます。妖刀村正も拝見させて頂きましたし……私は女遊びもしませんからね。長居してもお邪魔でしょう」
「ん、なんだ。もう帰るのか?」
天海が訊ねると、貴船は少しだけ呆れた声を出す。
「天海……昼間あれだけ暴れておいて、まだそんな元気があるのですか?」
「そりゃ、それとこれとは話が別だろ」
言いながら、天海は吉野を後ろから抱え込むように腕の中に納める。
「お前なぁ……頼むから吉野に無理はさせるなよ」
灼錠も苦笑を浮かべると、残っていた酒を一気に煽った。どうやら、こちらも今日はもう帰るつもりらしい。
「灼錠、いいのですか?妹君の許に天海を置いたままで」
貴船が訊ねると、灼錠はちらりと吉野を一瞥して言う。
「俺も明日は朝から仕事だし、長居できないんだよ。ま、大丈夫だろ?もし吉野が嫌だって言うなら、引き摺ってでも連れて帰るが」
「私は構いませんよ」
「とのことだ」
「はぁ……。天海、くれぐれも吉野太夫に失礼のない様に」
「分かってるって」
天海は吉野の肩に顎を乗せると、早く出て行けと言わんばかりに手を振る。
貴船は後ろ髪を引かれつつも、灼錠と共に吉野の座敷を後にした。
「村正。貴方も外に出ていてくださいな」
「……承知」
勿論、村正を外に出すのも忘れずに。


「さて、と。やぁっと静かになったな」
「ええ。……もう一杯、いかがです?」
吉野が酒を勧めると、天海は右手でやんわりと押し留めた。左手を吉野の腰に回し、ぐいと引き寄せる。
「酒も良いけどよ……俺としては、コッチの気分だな」
「あらまぁ」
くすくすと笑い、吉野は徳利を置いた。開いた両手を天海の肩に添え、胸元にそっと額を押し当てる。
「天海様のお噂は、私も耳にしたことがありますが……本当にお強い方ですのね。お兄様と戦った後で、こんな風に笑っておられる方はそうそういらっしゃいませんわ」
「まぁな。何なら、お前も試してみるか?……っても、道場じゃなくて布団でだけどな」
「ええ、お望みとあらば」
吉野は囁くように言い、そっと天海の衿元を見る。この着物の下は、きっと灼錠による傷がびっしりと付いているのだろう。
「傷、痛みますか?」
「大した事ねぇよ、舐めときゃ治る」
「まぁ。お強いこと」
小さく笑い、吉野は顔を上げた。間近に見える天海は涼やかな表情ながらも、その目にはぎらりとした光が宿っている。
「そのお力もお体も、存分に見せてくださいませ?天海様」
「勿論。嫌って程見せてやるよ」
天海の大きな掌が吉野の頬を包み、吉野はそっと目を閉じた。


**********


「おお、天海!今帰りか」
「ああ。……お前、随分とまぁ早くから仕事してんだな」
まだ朝靄の残る花街を抜け、天海は門をくぐる。
門の横には、入院した不出の代わりだろう。灼錠が番として立っていた。
「昨日言ったろ?朝から仕事だって。そういうお前はどうなんだ、どうせ吉野とお楽しみだったんだろ?」
「お前、実の妹相手によくそんな事言えんな?」
少々呆れた声ではあるが、天海は否定しなかった。にやにやと挑発的な笑みを浮かべ、灼錠に言う。
「お前の言う通り、ありゃ確かにいい女だ。一晩楽しませてもらったが、なかなかおもしれェなぁ」
「だろ?また金があったら買ってやってくれ。ついでに村正を祓ってくれてもいいぞ?」
「そりゃ、むしろ俺が金貰う側だな。あの刀祓うのは骨が折れそうだ」
「そうか。そりゃ残念」
わざとらしく肩を落とす灼錠を軽く拳で叩き、天海はまるで悪戯っ子のような目でちらりと後を振り返る。
「ま、刀は祓わないにせよ、また近いうちに来る。お前ともちゃんと決着付けたいし、吉野とも一晩じゃ足りねぇしな」
「おう、来い来い。それまでにちゃんと怪我治しとけよ?」
「お前もな。吉野にも無理すんなって伝えといてくれや」
ひらひらと手を振ると、天海は大きな欠伸をしながら門を後にした。
その背中を見送りながら、灼錠は小さく呟く。
「うーん……俺に似て丈夫とはいえ、吉野の腰が心配だな」
随分な男に気に入られたようだが……まぁ、吉野のことだ。問題無いだろう。
灼錠はにかりと笑みを浮かべると、静かに門の柱に背を預けた。
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橋谷あも

Author:橋谷あも
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やる気が出ると速いのに、やる気が出るのが遅い。
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